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八月十九日 木曜日
北海道旅行五日目
北海道旅行五日目
「怪しい井戸からこんにちは。煎餅です。
一週間後にあなたの家のテレビからお邪魔します」
「特にうら若い乙女のお宅は大歓迎でございます」
「ちなみに僕のカタナは三尺三寸五分です。
どのカタナかはあえて言いません」
犯罪気味にこんにちは。春秋です。
弁明をすると煎餅君はこんなイカレポンチではありません。
当然ビデオに呪いをかけて、人の家のテレビから参上することもできません。
そもそも彼はシスコンだから血の繋がっていない女性に手を出すことはありません。
以上、弁明終わり。
ところでこの井戸、見覚えは無いだろうか?
実はこの井戸、国民的人気ドラマ「北の国から」のロケで使われた井戸なのだ(多分)。
そう、この日は富良野周辺に点在する「北の国から」のロケ地巡りから始まった。午前10時ごろ、Gの運転でキャンプ場から出発する。
あらかじめ宣言しておくが、筆者は一度たりとも「北の国から」を見たことが無い非国民です。
*実は井戸でもなくて風呂らしいですね。どうでもいいや。
「87’ 初恋」の風力発電の家(多分)。
「2002 遺言」の石の家(恐らく)。
「2002 遺言」の拾ってきた家(推定)。
ドラマを一度も見たことが無い僕にとっては「ふ~ん、だから?」状態だったのだが、なにげに多くの観光客が訪れている。(石の家と拾ってきた家に至っては入場料すら取るのに)
そういえば石の家の入り口付近にこんな張り紙が。
『現在五郎が独りで住んでおりますので』
田中邦衛のミイラでも置いてあるのですか?(まだ生きてます)
それと、
プライバシーは?
今更だが、この合宿は今日で最終日である。
0時ごろ見学を終えた我々はGの運転で新千歳空港に向かう。電車、フェリー、車を駆使した旅の最後は当然飛行機だ。24時間以上かけて歩んだ道のりを、2時間で飛んで帰るのである。
途中のコンビニで昼食を済ませ、ただひたすら千歳へ向かう。
皆の胸の中には辛く恐ろしく、しかし鮮烈ないくつもの思い出がよぎっていた。
運転手(G)と助手(僕)以外は。
思い出してみよう。八月十八日のことを。
朝、札幌の日産レンタカーでエルグランドを借りた我々は高速道で美瑛まで向かった。そしてその日の夜、キャンプ場に着いた僕はあるものを目にした。
半分以下になっているエルグランドのガソリンメーターを。
ちなみに美瑛から富良野経由で千歳という道のりは、札幌から美瑛までの道のりより当然長い。
しかも走るのは高速道ではなく、信号のある一般道。
目の前に小学生でも分かる明確な危機が迫っていた。
当然ガソリンを入れるという選択肢もある。
ガソリンの値段は高騰しているが、ガス欠のエルグランドと共に北の大地に取り残されるよりは、はるかにマシだ。
しかし、
入っているガソリンの種類を明記していないとはどういうことですか?
>日産レンタカー
(単に我々が気付かなかった可能性もあるが)
運転した雰囲気からしてハイオクだとは思うが、確信がつかない以上、妙なガソリンは入れられない。
我々が新千歳空港にエルグランドを抱えて辿り着く唯一の術は、なるべく減速、急加速をしない省エネ運転しか残されていなかった。
コンビニを出てから2時間半ほど経過した。運転手のGも免許取得1週間後の割には良くやってくれる。
夜になれば走り屋がドリフトしてそうな峠の下り道を走りぬけ、千歳までの道のりの半分以上を走ってくれた。
だがこの時、既に彼の体力は臨界を突破していたのだ。
我々の前方10mほどを白塗りの左ハンドルのベンツが走っていた。
現在走っている道は二車線の追い抜き可の公道、右側車線。
少々混雑しており30km/hほどしかスピードは出せない。
当然ベンツも例外ではなくノロノロと安全速度で走っていたのだが、
次の瞬間、我々の眼に信じられない光景が映った。
ベンツが突如、指示灯も出さずに左にずれだした。
しかも完全に左車線に入ったのではなく、見事に2車線の中間を走っていく。
突如出現した公道の暴走王のために、周囲の車両からいっせいにブレーキランプがほとばしる。
しかしそれでもクラクションが鳴らされないのは、メルセデスの威厳か。あるいは、運転している極妻風のド派手なオバチャンのオーラか。
激しい挙動不審にうろたえる我々を尻目に、ベンツはゆらゆらと2車線をまたいで走り続ける。
こんな迷惑千番なクルマの後ろは走りたくないのだが、半端に道の中央を走っているため、デカいエルグランドでは抜こうにも抜けない。
抗う術も無く前方の不審車に翻弄されるG。もはや彼の集中力は限界だ。
しかしその時、無力な少年に天(千明)の啓示が下された。
「どかぬなら ぶつけてしまえ メルセデス」
踏み抜かれるアクセル。
常軌を逸した主の暴走に轟音で答えるエルグランド。
激しい横向きの重力がかかり車体が軋む。
Gは左から一気に抜くつもり…………ぱー!
左にずれかけていたエルグランドの左脇をかすめるように後方車両が通り抜け、ベンツの手前で減速する。
おのれ、伏兵が隠されていたとは… ←大違
そして右隣の席を見た僕の両目に映る炭化したG。
もはや燃え尽き、種火も心細い状態だ。強制運転手交代である。
走り去るベンツを横目に手近なコンビニに車を止め、乗換えを行う。
新千歳空港まであと30km。残りのガソリンメーターは3本ほど。
我々はこのまま走り続ける決断を下した。
国道をひたすら1500回転ほどで安全運転し続けるエルグランド。
北の大地は法廷速度プラス40km/hまで許されているため(大嘘)次々と後続車に抜かれていく。
不安、焦燥、怒り、苛立ち。
一陣の風となりたい欲求。軽トラに抜き去られる屈辱。
いくつもの感情が体を突き抜け、右足を踏み抜けとせきたてる。
それでもその秘めたる力を解放せずに走り続ける我々の眼に飛び込む一枚の道標。
『日産レンタカー この先500m 左折』
我々はついに約束の地へとたどり着いたのだ。
ガソリンメーターはまさに赤く輝きだそうとしていた。
空港へのバスが出るまで、しばしの休息をとる。心地よい疲労感が全員の体を包み込んでいた。
ついに、力無い2枚の若葉は全員を無傷で導くという偉業、いや『奇跡』を成し遂げたのだ。
ふと外へ目を向ける。
2日間、我々と共に苦難の道を歩いたエルグランドは既に車庫の中に還っている。
時計がバスの発車時刻を示す。今度は我々が還る番だ。
しかし気になることが一つ。
先刻から日産レンタカーにあるテレビが、
「北海道へ台風が向かってる」とか叫んでるんですけど。
果たして最後までこの旅はネタで満たされてしまうのだろうか。
大いなる不安を抱えたまま我々は空港へ入る。
掲示板を見ると欠航は無い。このまま飛ぶらしい。
胸をなでおろした我々は食事を済ませた後、お土産売り場になだれ込んだ。
白い恋人。夕張メロンポッキー。ありとあらゆる定番のお土産。
他にも網走印の湯飲み、熊肉の缶詰など少々奇異な物も売っている。
しかし我らの目にかなったものはたった一つ。
まりもキティ
実際に見てみないと想像もつかないだろうが、あえて言うなら、こんもりとカビの生えたキティちゃん人形だ。
この異様さは福井で見かけたらっきょキティに匹敵する。
恐るべきサンリオのメカニックに戦慄しつつ我々は飛行機に乗り込んだ。
機長の放送が流れる。
「ハイ、わたしサンダースですねん。どえらい台風来とっとけど、
安全に東京へ連れてくさかい、よろしゅおま」(意訳)
台風以上に不安な要素が増えたことは言うまでも無い。
気楽な絶望的雰囲気の中、発着時間になった。
飛行機はあわただしく「あらよっと」って感じで新千歳を離陸して、
ガタガタ揺れつつ「あ、よいしょ」って感じで羽田にガッタンと着陸した。
いい腕じゃないか、サンダース。
たった4行の味気ないフライトだったが、本当にコレだけだったのだから仕方が無い。
やはり旅で飛行機を使うのは邪道か。
羽田空港からは電車で帰っても良かったのだが、都合よく全員の家の近くまで行くバスが出ているようだ。
少々高値だったが電車に比べるとはるかに負担が少ないのでバスで帰ることにする。
そしてバスに乗る前に今回の旅の原点であり最後のイベントを行った。
世界の中心で愛を叫んでみた。
「誰か! 誰か助けてください!」
実はこれがやりたかっただけで飛行機使ったのかも。
こうして果てしなく広い空と大地と海を駆け抜けた旅は尻すぼみに更けていった。
-了-
~後日談~
旅が終わった翌日の8月20日、我々と苦楽を共にしたエルグランドは日産によりリコール対象に選ばれました。
やってくれたな、カルロス=ゴーン。
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