
「『うな丼』ってあるよな?」

「夏限定でしたよね」

「俺はまだ喰ったことないな。美味いの?」

「
宇宙の香りを感じる」

「
あんたいつだってなに言ってるかわからねーよ」

「ふはは、なにその
後でこっそり傷つくリアクション」

「まあ一応…その心は?」

「まずうなぎの味がな、『
合成タンパクで作りました』って言われても納得できるようなものでな」

「『前世紀の庶民的食材、うなぎの味を忠実に再現しております』」

「そうそう、そんな感じ」

「いや、さっぱりわからないんですけど…」

「なぜか全体的に均一に脂がのっていて、妙に歯ごたえがあるんだ。わかるか?」

「
そこから『宇宙の香り』を連想するあんたがわからねーよ」

「さらに、下の米も型にはめたようにまっ平らだしな」

「実際、量を揃えるためにはめてるんでしょうね」

「なんて言うか、
宇宙船の中から二度と戻れない地球を見つめてうな丼を食べる、そんな気分になるんだ」

「吉野家の内で」

「カウンターで」

「想像もできませんが、
迷惑で失礼だとはわかります」

「食いながら
『シュー、コー』とか言ってるんだろ、どうせ」

「それはない、さすがに。てか
ベーダー卿はうな丼食わないだろ」

「『ベーダー卿、うな丼です』」

「『
(シュー)フォースを感じる…(コー)』」

「………」

「
…いいな、それ!」

「ええ!?」

「『父さん、僕にもうな丼を食べさせてよ!』」

「『ベーダー卿、それがうな丼か…』」

「うわ、
皇帝まで」

「『(シュー)………(コー)』」

「両手に持ったうな丼を見つめるベーダー卿。
ひとつは自分用」

「そんで皇帝を投げ捨てるのな」

「二人に渡すという選択肢は有り得ない」

「あの、そろそろ周りの目が痛いので止めてください」
ここは電車内
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